オピニオン 意義のある対話:平和を実現するための道筋

筆者:ウクライナ人の若者
(原文は英語、翻訳は吉田文彦)

ウクライナがロシアの侵略に対して3年目の抵抗を続ける中、依然として喫緊の問いが残ったままである――この戦争はいつ、どのように終結するのか?

いまだ明確な解決策は見つかっておらず、世界中の政治学者や国際関係の専門家たちが、ウクライナの将来について議論し、解決への道筋を模索している。ある解決策は実行に数年を要する包括的な計画を含み、別の解決策は平和の持続可能性を考慮せずに複雑な問題を即座に解決しようとする。しかし、確実で意義のある平和は、武力や威嚇、暴力だけでは決して達成できないことは明白である。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、複数の公の場での演説において、民主的原則と国際法に基づく持続的な平和の実現の重要性を強調してきた。これをめざすとして、完全な平和のための「方程式」とは何なのか? そして、関係各国はその実現のためにどのような措置を講じているのか、あるいは講じるべきなのだろうか?

今までにウクライナは、平和の実現と戦後の秩序構築に関するいくつかもの議論に参加し、多くの場合、積極的にそれを主導してきた。一連の対話の中でキーウは常にその要求を透明性のある形で示し、自国民の意見を反映させている。信頼できる、正義にかなった、公平な平和が求められているが故である。そして現在までに、同盟国[ウクライナ戦争でウクライナを支持する諸国]との対話を通じて、キーウは主要な民主主義国家の支持を確保し、この戦争に関する国際的な議論やハイレベルな意思決定の最前線に立ち続けている(いわゆる「ウクライナ抜きにウクライナを語るな」というアプローチ)。しかし、同盟国との対話だけでは平和を達成するために十分ではない。

加えて、米国で新政権に移行して以来、状況は予想を超えるほどに困難な展開を見せている。それは、想定された特定の当事者[ロシア]にとってではなく、ウクライナにとってである。ウクライナは、不本意ながら[提案を]押し付けられる環境に置かれ、他者の条件のもとでの交渉を迫られている。このようなアプローチの結果は失望をもたらしかねない――粗雑な停戦合意は破綻し、和平協定の締結は遅れることになるのであり、それこそ避けなければならない事態である。拙速な結果を求めるトランプ政権は、ウクライナの正当な懸念に対して無関心であるように見え、その結果としてキーウがワシントンに自国の立場を効果的に伝えることが難しくなっている。

この状況下で求められるのは、同盟国とも敵対国とも、意義のある対話の可能性を確保するための現実的な道筋について率直に話し合うことである。戦略的柔軟性を活用することで同盟国との交渉を比較的容易に進めることができるだろう。一方で、敵対国との対話のための条件を整えるには、より多くの手立てが必要となる。意義のある対話が成立するためには、いくつかの要件が満たされる必要がある。その中には、主要な当事者間の信頼を築くための段階的なアプローチが含まれ、他にもいくつもの要件を満たしていく必要がある。

しかし、最大の課題は依然として残る――主権国家への侵略という責任を問いつつ、いかにしてモスクワをこの対話に引き込むことができるのか? ウクライナが平和的かつ公正な解決策を推し進めようといくら努力しても、相手側が別の意図を持ち続ける限りは、意義のある対話は実現しないだろう。

とはいえ、理想を目指す世界においてのみ、[プラスの変化は]直線的に進むものである。失敗した交渉や挫折で意気をくじかれることもあるが、対話は常にあらゆる解決策の中核と見なされるべきであり、したがって忍耐強く、適切なタイミングで追求されなければならない。

注:本「対話」サイトでの掲載原稿は原則として実名だが、この投稿については筆者の立場、安全などへの配慮から、本人の希望に基づいて匿名とした。[  ]内は訳者が付記。