『面白い時代に生きられますように』―作者不詳
オレクサンドル・カルペンコ博士
プロフィール:
元ウクライナ軍大佐。国際連合リベリア派遣団での勤務経験を持ち、現在は民間防衛会社のCEOとして勤務。キーウのタラス・シェフチェンコ大学にて国際関係学の博士号を取得。

2022年のロシアによるウクライナへの全面侵攻、そしてそれ以前のクリミア自治共和国の併合およびドンバスの占領は、国際関係に雪崩のような変化をもたらし、国家間関係における既存の規範を根底から見直す契機となった。
(クリミア自治共和国が併合された)2014年以降、ウクライナは国際社会がルールや合意を実効的に履行できない現実を直接、経験している。ロシア連邦と国際社会の行動は、「世界はもはや以前のままではなくなった」ことを明確に示している。
(ロシアの)プーチン大統領は、旧ソ連圏の東欧諸国が北大西洋条約機構「NATO」に加盟したことを「西側による協定違反」と非難しているが、実際に協定を破り、ウクライナに対して武力侵攻を行ったのはロシアであり、これは既存の合意や国際的ルールが機能しないことを証明するものである。2022年の侵攻時点で、ウクライナとロシアの間には300を超える二国間協定が存在しており、1994年にウクライナが核兵器を放棄した際、ロシアはその領土保全を保証する国として署名していたにもかかわらず、クレムリンはこれらの書面や約束を無視して武力侵略に踏み切った。

また、米国のトランプ政権下において、グリーンランドの併合構想やパナマ運河の返還、カナダ併合の発言、さらには全世界を相手にした貿易戦争の開始など、ロシアの行動に呼応するかのような「旧世界秩序の破壊」が進行している。これらは、ペロポネソス戦争とそれを記録した歴史家トゥキディデスの時代から(紆余曲折を経ながらも)地道に積み上げられてきた国際関係の枠組みを根底から揺るがすものと言えるだろう。
既存の条約や国際機関が拒絶される中、世界は「力による秩序」へと傾斜しているように見える。では、今後の国際関係は何を基盤とするべきなのだろうか。ウクライナから見れば、この問いの答えは明白である。世界は今、「力こそが正義」という関係性の構築を迫られている。この新たなモデルでは、主体間の平等な関係など存在せず、大国が他国の領土を要求し、貿易の利益を他国の犠牲の上で拡大しようとすれば、弱小国は従うしかないという前提が支配することになる。
しかし、ロシアに対するウクライナの抵抗、1939年におけるフィンランドのソ連侵攻への抵抗、あるいはベトナム戦争やアフガニスタン戦争におけるアメリカの失敗は、軍事力や影響力だけでは相手国の意志を屈服させられないことを証明してもいる。
また、対話を欠いた一方的な関係モデルは、既にその非効率性が実証されてきている。奴隷労働が市場経済に劣るように、国際関係においても対話を欠いた「一方的な意志の押し付け」は摩擦を生み、問題解決を遠ざけることになる。
ロシアによるウクライナへの侵略を終結させるためにも、対話は不可避かつ必要な手段である。しかし、現政権下のモスクワは、最後通牒や一方的な要求による「交渉」を繰り返し、応じなければ核の威嚇や民間人へのテロ攻撃に訴え、恐怖によって世界とウクライナを従わせようとしている。
果たして、こうした「修正主義国家」は、自らの行動がいかに無意味であるかを理解するだろうか。ロシアがウクライナで被った多大な損失や、欧州での目的達成に失敗した現実、さらにはトランプ政権による世界的な関税導入と、それに伴う経済危機の兆候。こうしら展開は、「新秩序」を掲げる国家のリーダーたちに、対話の必要性を再認識させる契機となるかもしれない。
いずれにせよ、今界は今、一つの劇のクライマックスに差しかかっており、我々はその劇的な変化の目撃者となることは間違いないだろう。
(日本語訳:ヤロスラフ・クラースニー)※訳文中の( )内の付記は翻訳者による